STRADABICYCLES -ストラーダバイシクルズ-

究極のその先へ。風をも味方にしたパーフェクトオールラウンダー~ CANNONDALE NEW SUPERSIX EVO ~

BY HIROKI TANAKA

あらゆるレースシーンに活躍する”名車”と呼ぶにふさわしい「SUPERSIX EVO」がついにフルモデルチェンジを果たしました。

 

初代SUPERSIX EVOが誕生したのが「2012年」、その時は“最軽量”というキーワードを基にフレームセットで695gという驚きの軽さが話題となりました。
その後「2016年」に登場したのが、“BALANCE OF POWER”をキーワードとした、完全なるオールマイティバイクである第二世代。

そして「2020年」、キーワードとなるのは“エアロダイナミクス”でした。

自転車にとって最大の敵=抵抗となるのは“風”
その為に各社がエアロダイナミクスを追求したモデルを続々と登場させていますが、空力を追求するが故に生じるのが「乗り心地の悪さ」、「重量増」というデメリット。それを完全に払拭するのは非常に困難であり、どこかで妥協が生まれてしまうのが現状です。
つまり難しいのは「オーソドックスなロードバイクと同じ乗り心地を実現しつつ、エアロダイナミクスに優れたバイクを作る」という点です。

新しく生まれ変わったSUPERSIX EVOが目指したのは正しくその両立。先代と「同じ乗り心地(同じ剛性)」と「同じ重量」を実現しつつ、エアロダイナミクスを追求するという事。

キャノンデールで“エアロダイナミクス”と言えば?・・・そうですね、昨シーズンに登場し、ストラーダバイシクルズでも多くの方が惚れ込んでしまった「SYSTEMSIX」です。
この最速エアロロード、SYSTEMSIXで培われたテクノロジーを活用し、トラディショナルなオールマイティに使える“ロードバイク”に変換したのが、新しく生まれた第三世代のSUPERSIX EVOです。

面白いのはエアロ=SYSTEMSIXそのままではなく、SUPERSIX EVOの為に作られたフレームシェイプ。
いわゆるエアロロードとは異なり、ロードバイクとしての様々なシチュエーションで鋭い走りを生み出す為、SUPERSIX EVO独自のチューブ形状を「ヘッドチューブ」、「ダウンチューブ」、「シートポスト」、「シートチューブ」、「シートステー」とあらゆる場所に採用しています。

SYSTEMSIXで生まれたハンドル周りのワイヤリングシステムも採用され、ワイヤーが剥き出しにならない構造にアップデート。純然たるロードバイクでワイヤーが露出しないバイクは現時点でごく僅かです。
ちなみにキャノンデール曰く、ハンドル+ステムのシステムだけで「約9.1watt」セーブできるとの事です。これが事実ならエアロの恩恵はものすごいですね。トータルでは「30watt」の低減に成功しています。

そして「乗り心地」と「重量」を大きく左右するのが使用するカーボン素材。従来の東レから三菱ケミカルに変更された高弾性&高剛性のカーボン繊維を用い、重量においてはキャノンデール史上、最も軽量なディスクロードモデルとなりました。
乗り心地≒「剛性値」については、前作のSUPERSIX EVOとほぼ同じ値を達成。つまり、乗り心地やハンドリングに秀でていた前作のSUPERSIX EVOと同じ乗り心地を持ちながらも、エアロダイナミクスの恩恵を受けた一台に進化したと言う事。

“名車”と呼ぶにふさわしいSUPERSIX EVOにエアロダイナミクスが追加された「もはや欠点が見つからない」、新たに登場したNEW SUPERSIX EVOにライドしてみましょう。


一世代前のSUPERSIX EVO Hi-MOD(2016~)を2台乗り継ぎ、その性能を知り尽くしたと自負する私、スタッフ田中。

先代のSUPERSIX EVOは、ヒルクライムの決戦バイクとして相応しい反応性、軽量性を持ちつつ、絶妙なしなりが生み出す巡航性能を持った私の理想を叶えるバイクでした。そして、低速から高速まで「思うままに操れるハンドリング」はキャノンデールの真骨頂とも言えるでしょう。トラディショナルなホリゾンタルフレームでありながら、最先端のバイクと遜色ない走りを実現する究極のオールラウンダー、それが先代のSUPERSIX EVOです。

こんなに完成されたバイクがモデルチェンジを果たすと聞いたときは、胸が踊りましたね。お披露目の瞬間をこれほどに待ちわびたバイクはありませんでした。

さて、新型のSUPERSIX EVO。やはりと言うか、まあ多くの方が見慣れたであろうあの形状です。昨今のマーケットに於いてありふれた、シートステーとシートチューブの交点を下げた、あの形状。キャノンデールの伝統的なスタイルは鳴りを潜め、D型断面でシートクランプは内蔵され、ありがちな形になってしまった・・・と、嘆かれる方も多いのではないかと思います。

ですが、断言しましょう。それを払拭するほど、あらゆるシーンで圧倒的なまでに速く、快適に、さらに楽しく進化しています!ペイントのクオリティも以前とは一線を画する美しさに。世の中に似た形のバイクは多くあれど、やはりキャノンデールはキャノンデール。乗った瞬間に度肝を抜かれ、それと同時に笑みが溢れてしまうのは、キャノンデールバイクの得も言えぬ魅力の一つです。

前置きが長くなりましたね・・・では詳細なレビューをしてゆきましょう。

まずは最も大きく変化したシートチューブ、シートステー周辺。先代のモデルですら、エアロダイナミクスを取り入れたTAP(Truncated Aero Profile)形状によって必要十分な巡航性能を体感出来ましたが、伝統の「SAVE」を切り捨ててまで作られたコンパクトなリア三角は、それを過去のものにしたと言えるでしょう。

フォークと同じ高さに設定されたシートステーは、前方から見たときに完全にフォークの影に隠れ、エアロダイナミクスを大幅に向上しています。低速から中速域、そして高速域まで流れるように加速してゆく様は、これまで他のバイクで感じたことがないほど。他社フラッグシップの軽量エアロロードも3台乗り継いで来ましたが、そのどれとも違う、なめらかなのに鋭く力強い加速感。これはチューブ形状の一つひとつが見直され、「エアロ、剛性、軽さ」の黄金比を追求したことも貢献していますね。

さらに、このシートステー形状は、快適性にも寄与。シートクランプの内蔵と相まってシートステーから上の、長く突き出たシートチューブを大きくしならせることに成功しています。「シートチューブ、シートステー自体を長くする→カーボン素材が振動を減衰」させていた先代とは違うアプローチですが、効果的に衝撃を逃していることを体感出来ました。荒れた路面でわざとモガいてみましたが、路面追従性も確実に向上しており不安が一切ありません。

一般的なハンドルバー&ステムより“-9.1Watt”を実現するというハンドル周りも非常に好印象。完成車で採用されるSAVEハンドルは、エアロダイナミクスだけでなく、その振動吸収性能にも驚きました。レースバイクとは思えないほどの柔軟性を持ち、形状的にも意外と握りやすいです。また、SYSTEMSIX同様、分割式コラムスペーサーによりステム高の調整が可能になっており、内装ルーティングの弱点である高さ調整が出来ない点もクリア。ハンドルの角度調整も可能で、よほど偏ったポジションでなければフィットに関する不満が出ることは少ないでしょう。(ケーブルは露出してしまいますが、一般的なハンドル・ステムへの交換も可能です。)

そして、個人的に気になった「ジオメトリー」の変更。スタック・リーチはバランスを見直され、特に小さいサイズではかつてないほどに乗りやすくなってるのではないかと思われます。私の乗る54サイズではヘッドアングルが-1.5度、フォークオフセットが10mm増加するという大幅な変更が加えられたのですが、結論から言うとかなり安定感が増しています。立ったヘッド・シートチューブにより前輪荷重になりがちな近代レースバイクは、キレが良すぎるあまり我々一般のライダーにはピーキーで扱いにくいことも多々ありました。その逆を行くヘッドを寝かせた設計ですが、後輪の上に乗る感覚でこれが絶大な安心感に繋がっています。それでいて、フォークオフセットを大きく取ったことでハンドリングのキレと振りの軽さはそのまま。スルーアクスルによるねじれ剛性の向上もレスポンスを高めてくれていますね。

競合他社との比較データによると、ピュアレーシングバイクとしては全てのヨー角に於いて最高の空力性能を数値の上でも実証。それを重量増・剛性の低下なしでやってのけるのがキャノンデールというブランドの凄さです。気になるあのメーカーとの徹底比較でもすべての面で同等以上の数値を実現しており、本当に「欠点が見つからない」究極のオールラウンダーとなりました。


また、気になるのが、そのエントリーグレードに当たる「スタンダードモッド」のバイクでしょう。ご安心ください、こちらもバッチリ試乗しています!

もうはっきり言います・・・正直、スピードが乗ったらハイモッドとの違いが分かりません(苦笑)

漕ぎ出しこそは重量差があるためハイモッドには及びませんが、中速から高速への加速性能、快適性の高さ、素晴らしいハンドリングは完璧に受け継いでいます!

なぜなら、乗り味に影響を与えるヘッド&BBの「剛性」がハイモッドと一緒で、もちろんエアロダイナミクスも一緒だから。素材の変更による少しの重量増にさえ目を瞑れば、これほどに走るバイクはほとんど存在しないのではないでしょうか。

レースで通用するスピードを備え、ロングライドでも抜群に快適、無駄のないシンプルでクリーンなルックス。あらゆるレベルのライダーが納得する究極の性能を30万円を大きく下回るプライスでも手に入れられるなんて・・・贅沢なまでに高性能を詰め込んだミドルグレード、こちらも必見です。


“ -30watt ”

伝統のフレーム形状と決別した代わりに得た、比類なき高性能。

過去最大レベルの劇的な進化を果たしたAll New SUPERSIX EVO、全てのライダーにオススメできる、真にパーフェクトな1台でした。

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HIROKI TANAKA
田中 宏樹

明るく朗らかな性格で常に元気に仕事をしているフロアスタッフ。
各メーカーのジオメトリーやサイズ、規格などに精通しており、それを諳んじるぐらいに記憶している。
元陸上部だったこともあり、高い心肺機能を有していることから、ヒルクライムのホビーレースで上位に食い込む実力がある。
とにかく時間があれば自転車に乗っている自称・他称「自転車バカ」。
イベントでは初めての方が安心して乗り出すための「デビューライド」や「モーニングライド」、
また平日休日問わずに行われる「トレーニングライド」など多岐にわたる。