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【FACTOR by TANAKA】目指したのはUCIルール内最速。FACTOR ONE

BY HIROKI TANAKA
FACTOR by TANAKA

「FACTOR ONE」と「OSTRO VAM 2.0」を実際に所有し、乗り込んできたスタッフ田中。
オーナーとして、そして数多くのFACTORをご案内してきた販売スタッフとして、実体験をもとにFACTORの魅力を深く掘り下げます。


UCIルール内最速を追求したスーパーエアロロード「ONE」

「日本バイシクル・オブ・ザ・イヤー2026」において2位に大差をつけ、満場一致で大賞に輝いた時代を象徴する一台。

FACTORのルーツである「BF1 systems」から誕生した革新的な処女作「FACTOR oo1」に端を発し、2016年に「ONE」というモデル名になってからは今作で3世代目です。

FACTOR「ONE」というバイク

今回のONEを語る上で特に重要なのが、「空力特性」と「ジオメトリー」。いずれも、これまでのロードバイクに存在しなかった、技術革新が詰まっています。

時代を先行する「空力特性」

最初に空気が当たるフロントエリアの造形は特に空気抵抗を左右するポイント。ヒンジ式フォークにより前方に非常に長いチューブ断面積を確保し、くびれた部分の厚みは約2cmという、驚異的な薄さになっています。

剛性を確保しつつ前方投影面積でこれを下回ることは、既存のロードバイクではおそらく不可能でしょう。

さらに、アゴように突き出たフォーククラウン(チンフェアリング)が前輪から剥離した乱気流をコントロール。最大限のワイドスタンス(UCIルール上限-1mm)がダクトの役割を果たし、最大限の厚み比率(8:1)と共に、正しくUCIルール内の限界を攻めた形状で空力を追求しています。

フォーク先端付近の造形、ブレーキの取り付け角度についても、何度も検証・解析を重ねられ決定。空気を切り裂くだけでなく、次に空気がどこへ行くかを指示し、システム全体でスムーズな流れを作り出す。その結果、正面の風に対して速いのはもちろん、ヨー角が大きくなる(横風に近づく)±15°付近でも競合他社に明確なアドバンテージを保つことに成功しています。

ハンドルはフィッティングと空気の抜けを両立した形状。サイコンの角度は調整不可で強制的にツライチな取り付け。シームレスにヘッドチューブ~トップチューブに繋がります。15mmの薄さでありながらプロのスプリントにも応える剛性を備え、革新的なジオメトリー(後述)により全サイズでキレと安定感のベストバランスを実現しました。

ダウンチューブは極薄なヘッドチューブから段階的に太くなっていく設計。

ダウンチューブ・シートチューブそれぞれ専用のボトルケージが付属し、一般的な丸ボトルを取り付けた際にエアロを最大化。

シートチューブの造形もONEの特徴の一つ。TTバイクを思わせる大きなカットアウトを採用しています。立ったシートアングルと相まって非常に攻撃的なシルエット。

サイドからの見た目では分かりませんが、シートチューブは進行方向に対してもタイヤに沿って抉られており、反応性と整流効果を高める工夫が細部にも見られます。

Di2のバッテリーはBB下部から挿入し、低重心にも貢献。バッテリーがない分、シートチューブ、シートポストを非常に薄くできるので、シートポストの厚みは14mmしかありません。

シートステーもフォーク同様、かなりワイドスタンスかつシャープな形状。空気の抜け、タイヤクリアランスなどに貢献します。最大タイヤ幅は実測34mmまでとし、お好みの乗り心地をタイヤで調整することが可能です。

既存の形状の改良するに留まらず、その要素を分解して適切に再構築した結果が現在のONE。そして、それらを形にできる工場の能力があってこそ成立していることも忘れてはいけません。


速さに対する、もう一つの革新「ジオメトリー」

昨今、プロトンが高速化する背景には現代的なポジション、太いタイヤが深く関わっているのは周知の事実でしょう。ショートクランク、幅の狭いハンドル、長いステム、ショートノーズサドルによる「前乗り」によってお尻周りの筋肉を効率的に使えるようになりパワー伝達が向上し、よりエアロなポジションを長時間維持できるライダーが増えました。太いタイヤも、転がり抵抗の低減と路面への伝達効率、グリップなどの各種性能向上に繋がっています。

その半面、重心は上がり前輪への荷重も大きくなるため、バイクコントロールの面ではリスクを伴うようになりました。既存のバイクでこの問題に向き合ったと言えるモデルは、ほとんどない状況です。

FACTORは究極の速さを追求するだけでなく、安全であることにも最大の注意を払って「ONE」を設計しました。前乗りのハンドル荷重に耐えうるフロント剛性や重量バランス、安定性、そしてそれらを満たしながらも、全サイズでトレイル値57.4mm~58mmという、完璧なハンドリング特性。

ショートクランクと太いタイヤにより上がった重心は、BBドロップを調整して補いました。OSTROよりも5mm低くなっています。地面とのペダルヒットを避け、前乗りのメリットを最大化するため、クランク長は170mm以下に制限されます。ライダーの位置が下がることで、副産物として前方投影面積の削減にも繋がります。

ヘッドアングルはフォークの横からの強烈な見た目に反して、72.5°~73.3°という常識的な数値。ステアリング軸の延長線上からオフセットした位置にフロントハブがくるので、全サイズでフロントセンターもトレイルも全く問題ありません。

シートアングルは約76°と、ロードバイクとしては最も立っており、明確に前乗りを前提に設定されています。オフセット0mm/30mmのシートポストが用意されていますが、30mmですらOSTRO の0mmオフセットよりも少し前に出ます。今までのサドルポジションでも空力やBBハイトの恩恵は受けられますが、FACTORが推奨する前乗りに最適化されたポジションでは、さらに異次元の速さを引き出すことが可能です。

ハンドルマウントはステアリング軸から切り離され、長く不安定なロングステムに頼ることなくプロレーサーが求めるリーチを確保します。フレームリーチが20mm延長され、その分ステムが20mm短いことは、ハンドリング・重量・剛性・強度面でもアドバンテージがあります。同サイズのOSTRO換算でステム長110mm~150mm相当のラインナップとなっており、かなり遠いハンドル位置も再現可能です。

なお、サイズ展開についても少しOSTROとは異なり注意が必要です。OSTRO 45サイズの最小リーチ(フレームリーチ+最短ステム長)360+90=450mmに対し、ONEは最小の47サイズで最小リーチ390+90mm=480mm、そして、ハンドル幅は380mmのみに限定されます。一般的に体重があり絶対パワー値が高い大柄なライダーほど空力改善のメリットが大きく、体重が軽いライダーは、空力よりもバイク重量にシビアになります。体重・パワーがある人ほどONEというバイクの性能を享受できるため、OSTROで45サイズに乗っていた人は、実質乗ることができるサイズがなくなっており、割り切って設計していることが窺えます。

高さはハンドルで20mm、スペーサーの組み合わせで15mm、最大で計35mmの調整が5mm単位で可能。ただしハンドルは購入前に決める必要がありますので、FACTORのジオメトリーに精通したスタッフによる緻密な計算が必要不可欠です。

これらのジオメトリーの革新によってさらなる速さ・安全性を引き出し、空力特性の数値に現れない部分でも競合を寄せ付けないバイクに昇華させたのが「ONE」と言えるでしょう。


スタッフ田中が「ONE」を選んだ理由

私はヒルクライムレースをメインとして年数回レースに出場しますが、実は平坦の高速巡航も大好き。特に9割が平坦のビワイチや、シマノ鈴鹿ロードなどのサーキットレース。最も速いバイクを、常に求めていました。

愛車の「OSTRO VAM2.0」はオールラウンダーとして見ても、エアロロードとして見ても上位の空力性能を持つバイクに間違いありません。ですが、もっと速いバイクがあるなら、機材マニアとしては黙っていられません。

「ONE」の明確な前乗りジオメトリー、インパクト大なフォークや各部の造形・・・様々なバイクを見てきましたが、既存のロードバイクの延長線上にない、その佇まいに、まずは心を奪われました。

しかし一つだけ不安だったのが「前乗り」に対応できるか、ということ。昨年、一時期OSTROで前乗りに挑戦してみたのですが、落車してから下りが今まで以上に苦手になり、ショートクランクについても懐疑的なスタンスでした。ONEには興味があるけど、さてどうしたものか・・・と、しばし悩みましたが答えは自分の中にありました。

これまで2台のOSTROを所有し、品質の高さ、妥協のなさ、無駄のない美しい構造、ジオメトリーや空力に対する情熱とノウハウは、FACTORが世界最高レベルであることを知っています。前乗りには最後まで不安がありましたが、“FACTOR(ロブ・ギティス氏)が破綻したバイクを作るわけがない”という全幅の信頼のもと、年始にはONEの購入を決意しました。


乗車インプレッション

3月に組み上げて以降、あらゆるコース、コンディションで実走したスタッフ田中。実際に乗り込んで見えてきた「ONE」というバイクの乗り心地をレビューしたいと思います。

バイク情報
サイズ:52
ハンドル:3 ロー(低い方/ステム130mm相当)
シートポスト:30mmオフセット
コンポーネント:R9270 デュラエース、OVERFAST エアロクランクなど
ホイール:YOELEO QianKun CS60
総重量 7.6kg

乗ってすぐ感じるのが、見かけに反したハンドリングの自然さ。構造上、フォーク周りは一般的な構造のOSTROに比べてかなり重量があるので、多少の扱いにくさがあると思っていましたが、これは杞憂に終わりました。フレームリーチが20mm伸びた代わりに20mm短いステム、完璧なトレイル値、フォーク・ヘッド剛性のバランス感など、あらゆる要素が絶妙に組み合わさり、キレと安定感を両立した自然なハンドリングを実現しています。

OSTROよりも40mm前後前乗りになっているのですが、思った以上に前乗りの不安はありません。クランクを短くしたのでダンシング時の重心などは変わったものの、慣れの範疇。ケイデンスを上げやすくなったので、もっと前に出すとさらに良くなるかもと期待し、試しにサドルを最大限前に出したのですが、流石にダンシングのやりづらさを感じました。いたずらにサドルを前に出せば良いというものではなく、前乗りのスイートスポットは人それぞれですね。

剛性はヘッド周辺もBB周辺もかなり高く、不要な撓みはほぼ感じません。ダンシング時のダイレクトな加速感は全力のゴールスプリント、集団からの単独アタックで飛び出すなど瞬発力が必要なシーンで確実にプラスに働きます。ガンガン脚が削られるようなイヤな硬さではないですが、しなって進むタイプのフレームではないです。

また、ブレーキが大変良く効くように感じます。奇抜に見えるブレーキの角度ですが、フォーク剛性がしっかりしているおかげか、同じ条件下のOSTROに対してもカッチリと止まってくれる感覚があり、身体をフォークに預けても安心してダウンヒルをこなすことができます。スピードが出るバイクにおいて、確実に速度がコントロールできることは大きなメリットでしょう。

高速巡航は、ONEが最も得意とするところ。ド平坦、無風なら、簡単に35km/hが維持できます。いつも走るアップダウンの周回コースがあるのですが、OSTROでは55km/hぐらいで走っている下り区間が、自然と60km/h以上出てしまいます。前乗りによってライダーの前方投影面積が小さくなること、前輪荷重のままペダリングしても不安が少ないことから、いつも以上にグングンスピードが伸びていきます。

そして、巡航中にふと気付いたことがあります。ペダリング中、膝から下に空気がほとんど当たっていないような感覚・・・。バイクを前方から見ると、圧倒的にワイドなフォークの影にライダーの膝から下の一部が隠れて、脚を風から守ってくれているようなイメージです。普通は脚の全体に空気が当たり、ペダリングでかき回され乱気流が生まれ、後ろに引っ張る力が発生するはず。それがONEでは、膝の辺りまで風を感じないので、やや上方向にも”無風ゾーン″のようなものが展開されているような感覚です。

最初に風が当たるフロントエンドで空気を整えてから受け流すことで、これまで体験したことのないような不思議なペダリングの感覚を味わうことができるのだと思います。この感覚と、実際の速さがとても楽しくて、購入以降はついついONEばかり乗るようになってしまいました。

振動吸収性は、レースバイクの平均点・・・より少し下かもしれません。エアロを追求すると縦方向の剛性が高くなり、振動吸収を高める扁平した板バネのような形状とは真逆の性質を持つようになります。太いタイヤの低圧運用で快適性を狙う、現代のレースバイクらしい設計になっているので、高圧で走ると手のひらが痺れました。メーカー推奨の28c~30cタイヤのチューブレス運用がONEの真価を引き出せるでしょう。(実測34mmまで対応)

さて、スプリントや巡航、ダウンヒルに於いてはこの上ない素晴らしいフィーリングのONEですが、登りはどうでしょうか。・・・結論から言うと、急斜面は得意ではありません。勢いで乗り切れる緩斜面は問題なくこなせますが、25km/h以下まで失速するような坂道では、OSTROなどオールラウンダーの方が確実に有利です。

これは単純に、重量に起因しています。フレーム、フォーク、ハンドルなどのシステム重量が、同サイズのOSTROに比べて500g前後重いので、重力に逆らって走るのは不利と言わざるを得ません。先述した通り、低速域自体は剛性・ハンドリング面でも決して苦手ではありませんが、それでも、速度が伸び切らない登攀ではジワジワと脚が削られていくでしょう。ONEを活かせる速度域は35~40km/h以上だと感じます。

軽量ホイールを装備すればある程度は解決できると思いますが、巡航性能が犠牲になると本末転倒なので、ここは割り切って考える必要がありそうです。非常に尖ったバイクのため、1台で全てをまかなおうとするよりも、軽量バイクやロングライド用バイクを別に所有し、使い分けた方が合理的かと思います。


これらを総合的にまとめると、ONEが合う人、合わない人は以下のとおりです。

ONEが合う人

・とにかく速い、個性的かつ最速・最先端のエアロロードに乗りたい
・軽量バイクやエンデュランスロードを所有しており、買い増しである
・平坦に近いコースや周回コースでのレース勝利・入賞を目標にしている
・ハンドルリーチ・スタックが確定している
・ポジション変更(特に前乗り)にある程度柔軟に対応できる

ONEが合わない人

・どこでも走りたいが、1台しかバイクを所有できない
・ロードバイク初心者で用途がフワッとしている
・ヒルクライム、ロングライド、ブルベなどがメイン
・ハンドル・サドルポジションが確定していない
・OSTROにギリギリ乗れるぐらいの体格である

エアロに振り切った非常に尖った性能とジオメトリー。最速を求める方に、唯一無二の価値を提供してくれます。私がONEを購入した目的のレースの一つである「シマノ鈴鹿ロード」では過去何度も走った多数のセグメントで、5つ以上自己ベストを更新できました!


オールラウンダーに一本化する大手メーカーを尻目に、独自路線と自社生産の強みで、ひたすらに最速を目指したエアロモンスター「ONE」

万人受けとは程遠い尖ったバイクですが、とにかく速く走りたい人を虜にする、乗って楽しいスーパーバイクです。

 


FACTOR by TANAKA

ご要望やご不明な点がございましたら以下のフォームよりご連絡ください。
後ほど、スタッフ田中よりメールにてご連絡させていただきます。




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HIROKI TANAKA
田中 宏樹

明るく親しみやすい人柄で、多くのお客様から信頼を集めるストラーダのムードメーカー的存在。
豊富な商品知識を活かしたパーツ選びはもちろん、バイクの選び方やサイズ選定など、初めてスポーツバイクに乗る方にも分かりやすく丁寧な接客を心掛けている。
自身もヒルクライムレースを中心にトレーニングを続けており、実際に走るサイクリストとしての経験を活かし、フィッティングやトレーニングに関するアドバイスも得意としている。
初心者向けのファンライドから経験者向けのトレーニングライドまで幅広いイベントを担当し、多くのお客様のサイクルライフをサポートしている。