キャノンデールの旗艦ロード〜SUPERSIX EVO Hi-MOD〜
BY TOMOTAKA YAMAMOTO
その全てのバランスを追求したフルカーボンロードバイク、それがSUPERSIX EVO。従来のSUPERSIX EVOは、まさに「BALANCE OF POWER」
前述の各要素をどれか一つだけ突き詰めるのではなく、全ての領域において高い基準を満たすバイク。それがSUPERSIX EVOというバイクでした。
そんなSUPERSIX EVOが、さらに高い次元の「BALANCE OF POWER」を追求し、そして現実化したモデル、それが「NEW SUPERSIX EVO HI-MOD」です。
軽いバイクは正義でしょうか?
NEW SUPERSIX EVO HI-MODは、実はフレーム単体では「+17g」も重くなっています。
バイクはフレームだけで走るのでしょうか?
CANNONDALEが提唱する「システム全体での重量(システムウェイト)」とは、走りを生み出す「フレーム、フォーク、ヘッドセット、シートポスト」で一つのバイクシステムとみなし、この4要素全体でシステム開発を行うという手法。
単純にフレームを軽くするが故、フォークのウェイトバランスが崩れてしまい、結果的にピーキーで不安定なハンドリングとなってしまう・・
安易な軽量化という「見えにくい弊害」を排除する為のシステムウェイトを追求した結果、NEW SUPERSIX EVO HI-MODは「フレーム、フォーク、ヘッドセット、シートポスト」のシステム全体では実に「70g」もの軽量化に成功しました。
軽い、そして、強い。
バイクを軽く造るのは簡単です。難しいのは「軽くて強いバイク」、つまり「軽くて剛性を持ったバイク」を作るのは至難の業なのです。
例えばペダリングパワーを受け止めるBB部分。
ここには新しい73mmという大径幅を持った「BB30A」を採用。
ハンドリングを司るヘッド回りは、オールドキャノンデールファンに懐かしい「アワーグラス(砂時計)」の形状を持った上下異径のヘッドチューブを採用し、高剛性を実現しつつ優しい振動吸収性を兼ね備えたヘッド回りを実現しました。
強い、しかし、優しい。
剛性の高いバイク=硬くて乗り心地の悪いバイク。
果たしてそれが答えでしょうか?
新設計となった「SPEED SAVEマイクロサスペンション」は、エンデュランスモデルのSYNAPSEで用いられる「SAVE PLUS」のテクノロジーを踏襲しつつ、その名の通り「SPEED」を追求したモデル。
元々、振動吸収性に定評のあったSPEED SAVEですが、更にブラッシュアップされ、「優しいのに、硬い」という絶妙の乗り味を実現しました。
その絶妙の乗り味をさらに加速しているのが、「SAVE シートポスト」と「シートチューブのジオメトリ」です。
前述のSYNAPSEでも採用された25.4mmという細いシートポストはしなりを生み出して乗り心地を向上されましたが、更に驚くべきは、そのしなりをより効果的にする為に「シートチューブを延長」した事。
従来のSUPERSIX EVOでも特徴的だったホリゾンタル(水平)のトップチューブは、さらにシートポストに向かうに従い高い位置に。
つまりシートチューブが長くなるため、シートチューブのしなりがより生み出されるフレーム形状となったのです。
余談ですが、シートチューブが長くなったが為にフレームの重量は前述の通り、重たくなりました。その代り、シートポストが短くなる為、結果的にシステムウェイトは軽くなったというロジックとなります。
エアロダイナミクスによる犠牲は?
エアロダイナミクスを追求する余り、縦方向に薄っぺらくなったフレームは、一般的に縦剛性は強いものの横剛性は弱く、ハンドリングや乗り心地に不満を覚えるバイクとなるケースが多々見受けられます。
NEW SUPERSIX EVO HI-MODでは「過剰なエアロ」を排除し、「TAP」とよばれる「シート後部をそぎ落とす形状」でエアロダイナミクスを実現させる事で、従来のモデルから70gもの抵抗軽減を実現しました。
高速巡航時のエアロを尊重しつつ、過剰なエアロを肯定しない。
こんなこだわりも、バランスを重視するNEW SUPERSIX EVO HI-MODらしい一面と言えます。
そのシルキーな乗り味でありながらも鋭い加速、そして伸びやかな高速巡航性能。
あらゆる面において死角の無いその出来栄えは、まさに「BALANCE OF POWER」と呼ぶにふさわしい一台でした。
特筆すべきはコストパフォーマンスに優れたモデルも存在する事。
特に爆発的なヒットを予感させるのが、ULTEGRAにMAVIC KSYRIUMホイールをアッセンブルしながらも完成車として490,000円(税抜)という破格のプライスのモデル!
このプライスでありながら、もちろんフレームはCANNONDALE GARMINチームがツールドフランスでも使用しているNEW SUPERSIX EVO HI-MODを使用。
フレームセット価格が420,000円(税抜)ですので、なんとコストパフォーマンスが高いモデルか・・・
フラッグシップモデルの完成車バイクがこのプライスで手に入るとは・・・
今年のCANNONDALEはアツいです!
TOMOTAKA YAMAMOTO
山本 朋貴
IT企業での経験を活かし、自転車業界では類を見ない、独自の情報管理システムを構築している。
また社員教育も担当し若手スタッフの研修を手がけている。
イベントの得意分野は自身の経験を活かしたパワーメーター講習。
長年マウンテンバイクのレースを走ってきたが、昨年からトライアスロンに挑戦。
オリンピックディスタンスやアイアンマン70.3のレースを中心に出場する。
2011、2012年全日本マウンテンバイククロスカントリー選手権・マスタークラスチャンピオン。