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ディスクロード用コンポーネントの決定版? 〜DURA-ACE ディスク R9170系〜

BY HISASHI INOUE

シマノの旗艦コンポーネント「DURA-ACE」のハイドロリックディスクブレーキタイプのテストライドを行いました。場所は諏訪湖周辺、ダウンヒル基調のコースで割とラフな路面がチョイスされており、否が応でもブレーキを多用する設定。そこで2日間でたっぷりとテストしてきました。
従来のハイドロリックディスクブレーキのハイエンドモデルは下記のR785系。見た目は好き嫌いが分かれるものの、Di2タイプでオイルブリードもしやすく、ライバルと比較しても扱いやすさや機能で抜き出ていたと思います。

株式会社シマノホームページより

こちらが新型のDURA-ACE R9170系のSTIレバー。ワイヤータイプ&従来型Di2タイプのデザインを踏襲しスッキリとしたデザインです。握ってみるとメカ部分が入っている躯体部分とフーデットのラバーの収まりがすごく良く、まるで一体の物体を握っているよう。さすがはデュラエースグレードと思わせる触感。ここがガバガバしてくるとストレスを感じてしまいますよね〜。大脳辺縁系・脳幹を使って乗るスポーツバイクだから触覚はかなり大切かと思います。そんなところまで考慮されているんでしょうね。当然ライド中のホールド性も高く、R785で感じた滑りやすさも新型では皆無でした。何よりどこにハイドロリックのタンクがあるのかわからないぐらいの小ぶりなデザイン。「あ、ディスクロードだ!」とわかってしまう、デコッパチの残念なスタイルからサヨウナラです!
特筆すべきポイントは、ブレーキレバーを握った時。ピストンの摺動感がまるでないんです!ロワークラスのSTIレバーで若干感じたピストン部分がズズッと入っていく引っかかり感がまるで無くなっていました。ワイヤータイプからいきなりこのレバーを使うともっと驚かれるのではないでしょうか?

ちなみにワイヤータイプのST-R9120との比較ですが、ST-R9170→360g、ST-R9120→505gとかなりの軽量さです!しかもアウター&インナーワイヤーがないのでハンドリングが軽い。

手のひらとの比較。かなり手が大きい私の手でこんな感じです。ワイヤーのDi2タイプでは小ささを感じてしまうことが多いのですが、ハイドロリックではちょうどいい感じ。ブレーキレバー部分の湾曲もワイヤータイプより素直で、個人的にはこちらの方がしっくりきました。

ディスクブレーキは握力の少ない方や女性には強い味方です。店頭でも使用されているお客様から「かなり助かっている」「下りが怖くなくなった」などのお声を拝聴しておりました。しかしながら不満点もありました。それはフーデット部分の大きさ。マスターシリンダー部分の出っ張りがやはり大きく、ブレーキレバーへのアクセスをスポイルしていたのも事実。そこでシマノセールスの女性スタッフの方にブレーキレバーを握っていただきました。

このようにレバーアジャストをしていなくても楽々指が回っています。もちろんハイドロリックなのでブレーキへの安心感は桁違い。Di2のパドル部分も大きめになっているようでタッチしやすそうでした。

前から見るとこんな感じです。十分握れていますよね?実乗車でしたらさらにうまく握れるのではと思います。
このように手の小さい方や女性にはこのコンポーネントは救世主となるのではないでしょうか?価格はもちろん高いですがスマートに使いこなすと素敵かと。

リア&フロントメカはワイヤータイプと同じR9120系。このサンプルフレームはディスクなのでスルーアクスルです。

ディスクは危ない、危険だ、ロードで使うには放熱性がという巷のの声に対応するために(?)開発された新型ローター。安全性と放熱性を確保するために大幅に金属部分を残しています。(黒い部分)
「これでどうだ!!」と言わんがばかりのデザインかと(失礼)。視覚的にも安心感があり成功していると思います。
シクロクロスで使用される場合は泥詰まりに対処するためにXTRでおなじみのSM-RT99が推奨されています。

キャリパーはロード系の新規格であるフラットマウント対応。軽量化に寄与しています。
ブレーキフィールですが、ロックしない!本当にロックしない、しづらい設計のようです。でもしっかりと制動してくれます。(当たり前ですが・・・)パッドとローターのマテリアルもグレードアップしているのかと思うぐらいフィーリングが良い。延々10キロ以上続くダウンヒルを集団で下り、ブレーキを多用しましたが、最後までフィールは変わりませんでした。ブレーキレバーを作動させた時の摺動感の無さと高剛性ローターのおかげで、まるでブレーキの存在を忘れるようなタッチでした。まさにストレスフリー。

ちなみにディスクはガツン!と効くから危ない!と未だにおっしゃる方がおられますが、ストッピングパワーはサイドプルタイプとほぼイコールですし、動作初期にいきなり効くようには設計されていませんので、想像以上にガツンと効いて怖い思いをするということはありません。むしろ天候に左右されにくいし、ロックしにくいためパニックブレーキなどにも対処しやすいのではないかと思います。レースじゃなくてロングライド派という人にはそれこそ疲れづらいのでオススメです!私もテストライドしながら、これを使うことを前提でいろいろと新しいフレームを妄想してしまいました・・・・。(それ以外にもいろんな妄想はしていましたが・・・)

 

現在考えられるコンポーネントの中では最も進化したR9170シリーズ。今までのハイドロリックディスクはどこかしらに「発展途上」を感じるところがありましたが、しかし今回は全くそれを感じませんでした。まさにディスクロード用コンポーネントの決定版!そんな印象でした。

コンペティションの世界でもいよいよディスクロードが使われだしましたし、各バイクメーカーも続々とラインナップを拡大してきています。これからはディスクロードの時代が来るのではないでしょうか?
考えてみればカーレースやモーターサイクルレース、いや市販車でも今や軽自動車でもほとんどがディスクブレーキ。スポーツバイシクルでもマウンテンブレーキはディスクブレーキが当たり前です。
ロードバイクだって当たり前の時代が来る。そんな予感がしました。

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HISASHI INOUE
井上 寿

幼少の頃より父親の仕事の関係で自転車の組み立てを行う。高校生の頃よりツーリングにハマり、大学生からトライアスロンに目覚め競技を始める。
電機メーカーで12年勤務したあと2001年、念願のスポーツバイクショップを開店(大津市:6坪ほどの小さな店舗だった)。
ロードバイク、マウンテンバイク、トラック競技が好きで、滋賀県の国体チームのメカニックを6年務めた。
2008年からはJALパックのハワイツアーのメカニックを務めている。
2011年現在の草津市に移転拡大。2013年に京都市左京区に「ストラーダバイシクルズ京都」をオープン。
それを機に若い頃に熱中していたトライアスロンに再チャレンジ。2015年に29年ぶりにアイアンマンレースを完走。
以来、遅いながらもトライアスロンを楽しんでいる。また写真が好きで、自転車と写真を組み合わせた「フォト&ライド」を開催。
仕事を忘れてお客様と一緒に遊んでいる。