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「軽さ」だけでは無い。カテゴリーを”削ぎ落し”た第三世代 ~ NEW TREK EMONDA ~

BY TSUYOSHI UENO

EMONDAの語源、それは”削ぎ落す”というフランス語の”Emonder”
その名の通り、「重量という錘を削ぎ落す事」を目的としたのが初代、そして第二世代のEMONDAだったとしたならば、新たに登場した第三世代 EMONDAは、「ロングライドモデル」や「レースモデル」と言った”カテゴリ”を削ぎ落し、あらゆるシチュエーションで最も高いパフォーマンスを発揮する事を目的として進化したのが一番のポイントと言えるでしょう。

ひと目見てわかるのが、MADONE、DOMANEと同じくエアロダイナミクスを追求したフレームワーク。
エアロダイナミクスを追求したMADONEで生まれ、DOMANEで洗練されたいわゆる翼のような形状のKVF(Kammtail Virtual Foil)を有し、”過度ではないエアロダイナミクス”を実現。

「カーボンのトレック」の真骨頂とも言える「OCLV(Optimum Compaction Low Void(超高密度圧縮、低空隙))カーボン」は800番台へとさらに進化。さらに高い剛性を持ちつつ、しなやかで、とんでもなく軽くなったOCLV800を用いたEMONDA SLRの場合、なんと700gのフレーム重量を実現。
当店でお求めいただいたバイクでは「6.3kg」という数値もたたき出しました・・・もう、「ディスクは重い」なんて昔話ですね。

さて、前置きはこれくらいにしておいて、新しくなった第三世代 EMONDAを実際にライドしてみて、その進化を探ってみましょう。


スタッフ上野はリムブレーキが好きでした。だって軽いし、メンテナンスも楽だし・・・
ですが、新しく生まれ変わった第三世代のEMONDAに実際に乗って、そして組み立ててみて、その考えが変わりました。
これからのスタンダード、それは「適度なエアロ+ディスク」これは絶対。
そういう意味で、このNEW EMONDAは各メーカーがターゲットとする、まさにベンチマーク的な一台だと確信しました。

ディスクブレーキ専用設計として開発されたNEW EMONDAではディスクブレーキのメリットを最大限に享受する事ができます。
「止まる事が自由自在」なのはもちろんですが、ディスクブレーキ専用設計としてカーボンレイアップされた事により「低重心&安定化」がさらに進化しているように感じます。

さて、次は当たり前とも言えるようになってきた「ワイヤー内装」について。
ひと昔のバイクの場合、ワイヤーがフレームの外にあるのは当たり前でしたよね。
そして次に生まれたのがフレームにワイヤーが入り込む「内装式」という形状。これが出た時には「美しい」と感じましたが・・・
今ではほとんどワイヤーが露呈しない「完全内装式」がハイエンドモデルでは「当たり前」になりつつあります。

このEMONDAの場合、トップモデルのSLRはもちろんですが、ミドルグレードのSLでも「ほぼ」ワイヤーが完全内装化。特にハンドル周りはほとんど露呈されず、よーく見なければワイヤーの存在もわからないところ。
逆に弊害と言えるのがハンドルの切れ角ですが、EMONDAでは必要にして十分な角度を保持。ちょっと隠れたところの遊び心もニクいですよね。

メカニック的な視点で言うと「完全内装式」の場合、フォークコラムの調整やカットが非常に難しく、今までの「完全エアロバイク」の場合だとヘタをするとフォークの高さ調整だけで何日もお預かりしないといけないケースも多くありました。
今までMADONE、DOMANEとエアロダイナミクスを追求してきたトレックですので、この点もEMONDAはすんなりクリア。
ちょっとしたポジション調整なら、ライダー本人が携帯工具でも行う事ができるのは、お客様にとっても大きなメリットですね。

そして今回の大きな特徴と言えるのがフレーム自体のエアロ化。
バイクをまっすく前か後ろから見たら、その「薄っぺらさ」は一目瞭然。

個人的に「やるなぁ」と感じるのはフレーム後方、”後ろ三角”と言われる部分。
エアロダイナミクスを追求するがあまり、どこのブランドも後ろ三角を下げる傾向にあるのですが・・・EMONDAではトレックらしいトラディショナルな形状を維持。
もちろん風洞実験も行い、MADONEやDOMANEから踏襲されたテクノロジーの結果もあるのでしょうが、「あ、あのバイクに似ている」という感が無いのは所有する人の喜びとして見逃せないポイントではないでしょうか。

トレックと言えば、のシートマストはMADONEやDOMANEと異なり、今までのテクノロジーを継承。
登場してから10年以上経ているテクノロジーではありますが、快適性やメンテナンス性でのアドバンテージはまだまだ健在といったところですね。
ただ・・・販売店の立場としては調整幅がシビアなので、ご購入時のサイジングに細心の注意が必要なのですが・・・まぁ、ここは販売店側のスキルという事で解決できますから、ライダーは全く心配する必要はないですね!

そして、気になるライドフィーリングですが・・・もう「勝手に進む」感じが非常に印象的でした。
「硬い」とか「柔らかい」とか、色々なフィーリングを示す指標はありますが、EMONDAで感じたのは「とにかく伸びる」というところ。

特に平坦路でペダル入力を止めた時、そのままビヨーンと減速せずに速度維持がラクなのが特徴的です。
もちろんOCLVが持つ剛性感や弾圧性などもあるのでしょうが、やはりこれはエアロダイナミクス化が大きな起因となっているのでしょう。

今までは「ヒルクライム=EMONDA」というイメージでしたが、個人的には「平地+ヒルクライム=EMONDA」という感じ。まさにオールラウンダーの名にふさわしい「加速も面白い、巡行も面白い、乗り心地も悪くない」つまり、「なんでも楽しい」が新しいEMONDAだと感じました。

どうしてもエアロダイナミクス化が話題となって「あのバイクと一緒でしょ」というイメージを持たれる事もある新しいEMONDAですが、その根底にはどんなレベルのライダーでも「すぐに楽しめる、自転車の楽しさ」を、最先端のテクノロジーで具現化した一台ではないかと感じました。

さて、先代EMONDAのリムブレーキモデルを所有している私ですが・・・こりゃ、EMONDA DISCに乗り換えないといけませんね!
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TSUYOSHI UENO
上野 剛志

初めての方にも優しく丁寧に接客することがモットー。
統括店長という職責からスタッフ間の調整役としての役割りが多い。
元アパレル業界での経験を活かし、サイクルウェアの着こなしやレイヤーのアドバイスもできる。
メカに対する探究心も深く、テックパートの責任者としても日夜研究を続けている。
ロードレース、とりわけ日本のJプロツアーのレースがとにかく好き。
自身もホビーレースで勝利することが目標。