STRADABICYCLES -ストラーダバイシクルズ-

非日常へいざなうジェットコースター ~ CANNONDALE Topstone Carbon ~

BY TOMOTAKA YAMAMOTO

Topstone Carbonを語る前に、まずはこの動画を見ていただきましょう。

私のように昔からのMTB好きにはたまらなく懐かしい、そしてこの動画を初めてご覧いただいた方にはとっても刺激的な内容ではないでしょうか。

1993年。今から約20年もの前にアメリカで行われた「KAMIKAZE DH(カミカゼ ダウンヒル)」というダウンヒル競技。
今のようなジャンプなどの大きな縦の動きではなく、だだっ広いジープロードをいかに高速に下り降りるかを競うという非常にシンプルでクレイジーな内容です。

当時のサスペンションはストローク量が60mmほど。リアサスペンションが付属しているバイクの方が珍しかった時代に100kmほどのぶっ飛んだスピードで、正にぶっ飛んで山を下り降りる。

なぜ「KAMIKAZE DH」をご紹介したかと言うと、今回、レビューするTopstone Carbonが開発に当たりインスパイアされたのが、この「KAMIKAZE DH」だという事だから。
新しいTopstone Carbonを見つめていく際、この「KAMIKAZE DH」をイメージすると、とってもわかりやすいと思います。


まず、Topstone Carbonにおいて最も特徴的なのが、リアに設けられた”サスペンション システム”の「KingPin」

前述の「KAMIKAZE DH」でもあったように、オフロードというものは必ず凹凸(おうとつ)が存在し、その凹凸をいなすのがサスペンションの役割です。
例えば車やオートバイのように動力がエンジンの場合、サスペンションの「動き」というのはロスがあってもエンジンパワーでごまかせるのですが、動力が人力の自転車の場合、「ロス=遅い」に直結します。

つまり動きすぎるサスペンションは「気持ちいいけど、遅い」、硬すぎるサスペンションは「速いけど、しんどい」と言う事。
キャノンデールによると、サスペンションを徐々に柔らかくしながらライドを行うと、”ある一点のところで丁度よい硬さと柔らかさを感じるポイント”がある事が判明したとの事です。つまり、それが「ストローク量=30mm」の「KingPin」
もっと大きく、もっと柔らかく動かせるのは技術的に可能なのですが、このストローク量に収める事で最もキモチイイ動きを実現する事ができたとの事です。

シートチューブに配置されたベアリングを軸にチェーンステーがしなる事でストロークを産み出す構造は、ショックアブソーバーを持たない為に非常に軽量。オンロードでのライド時は硬く、それでいてオフロードではしなやかにしならせる。
この「KingPin」を開発する為に「4年間、29個もの試作品」を作り出したと言う事です。キャノンデールの本気度がうかがえますね。

さぁ、そんな「キャノンデールの本気」を感じさせるTopstone Carbon。実際にライドしてみましょう!


スポーツバイシクルマーケットの内情的な話をすると、世界的には「ロードバイクの成長は止まった」というように言われているらしく、そんな中でも爆発的に成長しているカテゴリがいわゆる「Gravel Road(グラベルロード)」だそうです。

欧米各国ではグラベルロードのイベントが毎週のように開催されており、完全に新しいカテゴリとして確固たる地位を確立している状況だそうで、そんなカテゴリにキャノンデールが本気で取り組んだ結果、生まれたのがTopstone Carbon。

正直に言いましょう。最初に見た時は「また、イロモノ的なもの、作ってきたなぁ・・・」と思いました。ハイ。
乗ってすぐにわかるロードバイクと異なり、このテのバイクは「チョイ乗り」ですぐに良さがわからないもの。スポーツバイクを販売する側から言うとハッキリ言って「売りにくい」ものであるのも事実なのです。おっと、ぶっちゃけ過ぎか・・・(苦笑)

そんなちょいとネガティブなイメージを持って乗ったバイクですが・・・ハイ、このバイク、惚れ込みました。私、購入します!(笑)

ハッキリ言いましょう。舗装路ではロードより遅いです。オフロードではMTBより走破性は低いです。
けれど、それが楽しいんです。

まず、舗装路ですが、まっすぐ走るならロードに任せましょう。このバイクは「寄り道」するのが目的のバイクです。
例えば普段、ロードバイクで高速にカッ飛ばしてはしる舗装路。その脇にちょっと目を移すと、細い抜け道やちょっとしたあぜ道があったりしますよね。そこにこのバイクで突っ込むんです。
すると、そこには、今まで見えていなかった景色やバイクの挙動が待っています。これって、生まれてはじめて自転車に乗った時と良く似た感覚なんですね。

脇道で見つけた、今までまったく見向きもしなかった、なんてことない砂利道も、Topstone Carbonなら立派なオフロードになるんです。走破性の高いMTBではつまらない単純な砂利道も、このバイクなら不安定なオフロードに生まれ変わるんです。

例えばMTBだと単なる移動区間としか感じられないようなジープロードでも、Topstone Carbonなら超絶に楽しいトレイルに変身します。
冒頭の「KAMIKAZE DH」をイメージしてみてください。単なるジープロードでも楽しそうでしょ?

「KAMIKAZE DH」のように下りだけでなく、このTopstone Carbonは「登りも面白い」!
「KingPin」サスペンションは大きなストロークが無いので、明らかな動きを感じる事は少ないのですが、オフロードの凹凸の登りで確実に後ろから「グッ、グッ」と蹴り上げられるような感覚がありました。これがオモシロイ!
私個人の意見で言うと、リアサスペンションって自分の感覚にハマらないと「動いて欲しい時に動かず、動いて欲しくない時に動く」という事があるんですが、この「KingPin」なら、もともとの作動感が少ないので、そういうストレスを感じないのもメリットですね。
リアサスペンションのセッティングというものが存在しないので、色々と細かいセッティングにこだわらず、ババーンと感覚で乗るライダーには最適なシステムではないでしょうか。

そして、めちゃめちゃ面白いのがトレイルの下り。
下ハンドルを握り、重心が下がる事で目線が低くなりますが、その分、ライドの迫力は倍増!フロントサスペンションが無いので、走破性はもちろん低くなりますが、逆に「操っている感」が大きいので、バイクをコントロールするのがとんでもなく楽しい!
絶対的なスピードがMTBと比べると落ちるので、コケてもインパクトが小さいのと、トレイルにもダメージを与えにくいというのもポイントですね。

とにかく「チョイ乗り」では見えてこなかった、乗れば乗るほど自然と笑みがこぼれる、とにかく「楽しい」がバイクから伝達してきます。

便利であったり自由が”当たり前”になっている昨今、この「不便」であったり「不自由」が逆に楽しさに直結する。そんな価値観さえも変換してしまう可能性を秘めたバイクだと感じました。

日常を一瞬で非日常に変えてくれるTopstone Carbon。
普段の趣味としてのライドとしても活躍してくれる一台ですが、やっぱり走りもバイクも性能をフルに引き出すには「このイベントに出たい!」というのもモチベーションの一つですよね。

前述にあるように、グラベルロード先進国の欧米各国では毎週のようにグラベルロードのイベントが開催されており、「単なる普段使いだけでなく、イベントでも十二分に楽しんで使い倒せる環境」が整っています。
じゃぁ・・・日本はどうかと言うと・・・続々とイベントが企画されています!

世界中のグラベルロードイベントで核とも言えるイベント、それが「グラインデューロ」

世界中のあらゆるスポーツイベントの中で最もエントリーチケットの入手が難しいものの一つとも言われるグラインデューロが、日本にも初上陸!スタッフ山本も参加する予定ですが、まずエントリーができるかどうか・・・それほどの人気と可能性を秘めています!

そしてMTBerには定番の「セルフディスカバリー・アドベンチャー・in 王滝」でも新たに「グラベルロードの部」が新設されます。

「せっかく買ったバイクだから、目いっぱい楽しみたい」
そんな環境が日本でも生まれつつあるグラベルロード。そんな黎明期を目の当たりにするチャンス。歴史が変わる一瞬の目撃者になりませんか?

そしてグラベルロードの可能性を広げるのが、テンチョー井上が提唱する「アドベンチャーライド」つまり「旅」の相棒としてもベストなチョイスだというところ。

実はスタッフ山本、前々から「お昼頃にバイクで自宅を出発し、近くのキャンプ場でテントを張ってビールを飲み、翌朝には帰宅する」なーんてゆるーいソロキャンプを考えておりました。が、「流石にエアロバイクではサマにならんよな・・・」と思っていたところに、このTopstone Carbonの登場です。これは運命としか思えません(笑)

あらゆる積載に使えるラックマウントやフェンダーマウントなど、「旅」の相棒として使える装備もバッチリ。
普段の非日常ライド、レースでのカッ飛びライド、そして旅ライド・・・あらゆる使い方で大活躍するバイク。
全ての道をジェットコースターに変えてしまうほどの楽しさを持った一台だと感じました。

試乗を終えた時には「中途半端」なんてイメージは全く頭から消え去り、購入する為のシュミレーションが頭いっぱいに広がっていました。
昨年、F-Siと出会った時に感じた衝撃と同じくらいの驚きを感じたTopstone Carbon。っと思うと、昨年にF-Siと出会ってMTB熱が再熱したのは、このTopstone Carbonと出会うための布石だったのかもしれませんね。キャノンデール、恐るべしです(笑)

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TOMOTAKA YAMAMOTO
山本 朋貴

IT企業での経験を活かし、自転車業界では類を見ない、独自の情報管理システムを構築している。
また社員教育も担当し若手スタッフの研修を手がけている。
イベントの得意分野は自身の経験を活かしたパワーメーター講習。
長年マウンテンバイクのレースを走ってきたが、昨年からトライアスロンに挑戦。
オリンピックディスタンスやアイアンマン70.3のレースを中心に出場する。
2011、2012年全日本マウンテンバイククロスカントリー選手権・マスタークラスチャンピオン。