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レース注目のレポート

アイアンマン70.3 セントレア知多半島ジャパンに参戦!〜山本レポート〜

あなたは誓うだろう。ののしり、不満を唱えるだろう。
これで最後だ。もうありえない。二度とやるものか。
歓喜あふれる観衆。まばゆいばかりの光の中のフィニッシュライン。首にかけられた完走メダル。
痛みはいつの間にか遠のき過去のものに。
きっとあなたは望むだろう。あともう一回チャンスがあるならば。
そして、チャレンジを再び繰り返す。
-「25 Years of the Ironman Triathlon World Championship」より-

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SWIM 1.9km、BIKE 90.1km、RUN 21.1km
今まで経験した事の無い、途方もない旅は「速さ」を追い求めていた自分の「強さ」を試されるレースでした。

本格的なトライアスロンとしては、前回の近江八幡トライアスロンに次いで2回目のチャレンジとなる「アイアンマン70.3セントレア・ジャパン」
ミドルディスタンスとは言え「アイアンマン」という大きな目標の為に「スイム」、「バイク」、「ラン」の3種目をバランス良くトレーニングして挑みました。

近江八幡ではあっさりと過呼吸になって撃沈した「スイム」
とにかく一番のネックとなるこの種目を徹底的に補完すべく、週に2回、出勤前に1時間だけでもコツコツとプール通いを続け積み上げる。
色んな方の意見を素直に受け入れ、インターバル、サークル、ドリルなど、試せる事は全て試して当日に臨みました。

バイクは今までの経験で何とかなるとして、次のネックが「ラン」
持病の膝と2月に怪我をした足首の関係上、長い距離を踏む事が出来ず、結局は通勤ランの10kmがせいぜいって感じ。
レース距離の21.1kmを経験せずにスタートラインに立つのはちょっと不安でしたが、スイムの「死んでしまうかもしれん」という不安感に比べると相当気軽な気持ちでトレーニングを積み重ねました。


そして迎えたレース前日。

レース前日はナーバスになりやすい自分ですが、トライアスロンの会場や参加者の方は自分が育ったMTBの世界と良く似ていて、一言で言うなら「フレンドリー」
排他的でなく、競技者は敵ではなく仲間であるという感覚。

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ストラーダトライアスロンクラブのメンバーと一緒に行動する事で、初めての事でも安心して対処できるのも大きい。
不安な事はみんなで分かち合う。

仲間との一体感を感じながら、心地よい緊張感を持った状態で前日のレジストレーション、ブリーフィング、バイクチェックインを済ませる事ができました。


トライアスロンの朝は早く、3時30分に起床してスタート地点には6時に到着。
最終のバイクチェックインを済ませると、あっと言う間に試泳時間に。

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周りの選手に流されるようにウェットスーツに身を包み、元気いっぱい、勢い良くザバーンと試泳へ。
すると、いきなり過呼吸に!
「アカン、これはDNSでは・・・」
と思って、慌ててテンチョー井上に駆け寄ってアドバイスをもらい、今度はココロを落ち着かせながら自分のペースでチャプチャプと入水して泳ぎだすと・・・
「おおおおお!キツくない!!」

周りのペースに惑わされず、自分を信じて、自分のやり方を見つけ出す。
それだけの事で壁はあっさりと越えられる。これは新しい発見でした。

一旦、陸に上がりスタート時点まで待ちますが、その際もアドバイスに従い、浜辺でランニングして心拍を上げる。

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周りの選手でランニングしている人は少なかったのですが、トライアスロン初心者である自分がすべきことは今後のレースに活かせる「自分流」を見つけ出す事。
正解か間違いか。わからない事でも「とにかくやってみて、今後に活かす」事を意識して行動しました。

さぁ、8時15分。長い旅がスタート!
予定通り、集団の最後尾からゆーっくりと入水して最初のブイまでは全く心拍を上げずに進む。
前回はこの時点で過呼吸に陥っていましたが、今回は落ち着いており、全くキツさを感じない。
「命には代えられん!」とちょっと奮発して購入したフルオーダーのウェットスーツは「流石」のひと言。

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前回は首が締まってしまい、まったく呼吸ができなくなったのですが、今回はかなり余裕が違います。
なによりフロントジップが最高でした。ああ、高かったけど、買って良かった~(笑)

閑話休題。1つ目のブイを越えた所から、ぼちぼちとスピードアップ。
前回はタレて落ちていくばかりでしたが、今回はズンズンと抜かして行ける!
トレーニングでは2kmは楽勝でしたが、いかんせん今はオープンウォーター。この先に何があるかわかりませんので、かなりゆっくり目のペースで進みます。
「Uターンしたらギアを上げて、一気にペースを上げよう」
そう考えながら、Uターンのブイを過ぎた時に事件は起こったのです!
「おしっこしたい・・・」

笑いごとでも何でもなく、冷えによって強烈な尿意が襲ってきました。
MTBのXC時代、過激とも言える発汗量に備え、レース直前までウォーターローディングを行うのは自分の中での「常識」でしたが、トライアスロンの世界ではこの「常識」が通じませんでした。

下腹部の刺激は集中力を削ぎ落とし、余計な思考が入り込んできて前へ進む事を阻害します。
結果的にペースを全く上げる事が出来ず、とにかく陸に上がる事だけを考えて進む。

スイムタイム=0:41:29

自分にとっては上出来なタイムですが、正直、最後のトラブルが無ければもうちょっと上げられたような気が・・・
レースにタラレバはありませんが、次回はもう少し前からスタートするのもチャレンジしてみたいと感じたスイムでした。


さて、フラフラになりながらバイクへのトランジット(T1)へ。
予め用意しておいたバイク用のアイテムを受け取り、あたふたとバイクの準備を行います。

オリンピックディスタンスのバタバタしたイメージと異なり、腰を下ろしてじっくりと用意している選手が多い中、とにかく一目散にトイレへ向かう!
至福の時間を過ごした後、改めて準備を再確認してやっとバイクスタート。

T1タイム=0:09:38

これは明らかに掛かり過ぎ・・・
次回はトイレ対策もしっかり念頭に置いておかないといけませんね・・・


さぁ、得意と言えば得意のバイクパート!

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ここでどれだけ挽回できるかがポイントですが、いかんせん70.3という距離が初めてな為、どんなペースで突っ込んで行けば良いのかがわからない・・・
とりあえずはTTバイクの性能を信じて前へ進みますが、踏み過ぎず、遅すぎないペースで。
体感的に80%くらいの力でペダルを踏みます。

今回のバイクにはパワーメーターを着けていなかったのですが、やはり全体的なパワーマネジメントという観点ではパワーメーターは必須アイテム。次回は必ず移植してでも装着しようと考えながら進みます。

さて、バイクパートでの懸念事項は「補給のボリューム&タイミング」と「TTポジションによる身体への影響」

補給については、ちょうど前月号のLUMINAで特集されていたので、これを最大活用。
MTBとはまったく異なる「少しずつを計画的に刻んで摂る」という事を意識して、時間と体感で間隔を定め、定期的に摂取。
結果的にハンガーノックの素振りは無かったので、補給については合格点。

腰痛持ちの自分が懸念に感じていたのが、TTポジションの維持。
3時間以上ずっと緊張する訳にもいかないので、時折、休憩をはさみつつ、バイクの上で上半身のストレッチ。
周りでこんな事をしている選手は見受けられませんでしたが、自分の身体のシグナルを感知しつつ、経験で乗り切ります。

「結構ラクだけど、このペースだと緩いのかな?けど、飛ばしたら後でツケが来るのかな?」

ずっと悩みながらライドを続け、気が付けばゴール。
結構余力が残った状態でバイクパート終了。ちょっと不完全燃焼な感じ・・・これで良いのかな?

バイクタイム=2:36:43

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うーん、結果的にはもうちょっと踏んでも良かったような・・・
心肺、内臓、脚、上半身、いずれも結構余裕をもった状態でランへのトランジット(T2)へ。

T2タイム=0:04:41

念のためにトイレへ向かったんですが、予想外の長蛇の列・・・
途中のエイドですれば時間短縮になったのになぁ・・・これも勉強!


さぁ、最後のランパート!

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後方スタートのチームメイト(猛者)がランで同時スタートになりましたが、アッと言う間に消え去りました・・・ああ、凄い・・・

しかし、自分は新参者のチャレンジャー。自分のペースでしっかり走り切る事が大切と、ゆったり目のペースで刻みます。
とはいうものの、意外と脚が動き、身体もツラくない。ふとスントを見るとキロ4分ペースで刻んでおり、慌ててペースを落とす。

「あれ?意外と最後まで押し切れるんじゃないの?」

と考えながら前へ進みます。
コースはトレラン好きの自分にとって大好物の森の中を抜ける登り下りの多いルート。
バラエティに富んだルートは景色も楽しく、走っていてシンプルに「楽しい!」と感じられる内容でした。

でした。だったのです。そうだったのですが・・・

残り、12kmの看板が見えた時、なんとなく、本当に「なんとなく」脚を止めてしまったのです。
「ちょっとしんどくなってきたから、ちょっとだけ歩いて休んでみよう」

完全なる経験不足。
ランで脚を止めると言う事は、この先、走る事ができなくなる事の始まり。

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「さぁ、走ろう」と思っても、両足太腿部分に激痛が走る。
単純にロードを走り込んでいないトレーニング不足。脚にやさしいトレランばかりでは勝負できない現実を知りました。

痛みは心をも蝕みます。
走ろうという気持ちさえも萎え、今までは気にならなかった身体の冷えや腹痛を感じてきました。
弱気になる事で身体は動く事を拒否し、思考はどんどんネガティブに。

自分の弱さと向き合う。

自分の情けなさと対話する自問自答の時間がしばらく続きます。どんどん下降する心。
そこで力を与えてもらえたのが沿道からの大きな応援の声。
「その一歩が大切!確実に進めっ!」
この言葉は弱気になる自分に活を入れてくれました。

もう、ペースなんて関係ない。順位も関係ない。自分に負けない為に這ってでもゴールする。

残り8kmは色んな事を考えました。自分を見つめ直していました。
とても苦しく、とても残酷で、結果的にはとても幸せな時間でした。

どれくらいの時間を歩いたのかわかりませんが、気が付けば目の前にはゴールの喧騒が。
「ああ、やっと終わる」という思いや「情けなかったなぁ」という思い、「これで終わりにしたくない」という思い。
とにかく意味不明な色んな思いが頭の中に渦巻く中、ゴールゲートをくぐり抜けました。

ランタイム=2:19:30

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見事に前半1時間はそこそこのペースで刻んでいますが、後半1時間30分は止まりまくりのタレまくり・・・
何回立ち止まったかが明白になったデータですね・・・


結果的に総合タイムは「5:52:03」順位は総合450位、エイジ97位でした。

まぁ、最初から上手くいかないから面白いのがトライアスロン。

色んな課題を見つけ、解決策を考え、トレーニングで行動し、レースで実践する。
次は、きっと、もっと、必ず・・・

普段の仕事への取り組みにも通じるルーティング。トライアスリートにビジネスパーソンが多いという事も納得できますね。

自分自身を見つめ、自分の弱さを試される。
そんな非日常が存在する場所でした。

「Why Tri」

こんなにも素晴らしい世界。

できなかった事ができるようになる実感。
「生きている」と痛烈に体感できる経験。
少しずつ変わり始める自分。

「トライアスロン」って言うとついつい身構えちゃう人って多いと思います。
けど、ロードバイクを持っているなら、ぜひ、チャレンジして欲しい!
必要なのはウェットスーツと「やってみよう」という少しだけの勇気。

トライアスロンを通じて経験した世界、そんな世界を一人でも多くの方に知って欲しい。
そんな事を強烈に感じた初アイアンマンでした。

あなたは誓うだろう。ののしり、不満を唱えるだろう。
これで最後だ。もうありえない。二度とやるものか。
歓喜あふれる観衆。まばゆいばかりの光の中のフィニッシュライン。首にかけられた完走メダル。
痛みはいつの間にか遠のき過去のものに。
きっとあなたは望むだろう。あともう一回チャンスがあるならば。
そして、チャレンジを再び繰り返す。
-「25 Years of the Ironman Triathlon World Championship」より-

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